そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

この半径三十センチのなかで

 世間が騒がしいと、どうも卑屈になるというか、こないだも電車でクイーンのライブエイドの動画をスマホで観賞しておる女人がいたのだが、はっはーん、さてはこやつボヘラブ観たのだな、くそーうらやましいぜー、って、だったら観れば? ってものなのじゃが、おれの精神に「流行を追うのはださい」という芯の硬い、けれども世間からみればくだらない美学があるために、観らんないのである。かなしい。ライブエイドをみるならU2もみてくれ。あれすごいから。

 

 1975の新譜 「ネット上の人間関係についての簡単な調査」というアルバムがとてもおれ好みの出来栄えで、こればっか聴いている。このバンド名めんどくせーのでおれはもうふつうに「イチキューナナゴー」と呼んでいる。わかるっしょ?

 

 ペイペイがうんぬんかんぬん。うるせぇっつんだ。こちとら貧乏だ。ってことは今この20パーオフの波に乗らねぇつうのは、とっても粗忽。はは。なるほどね。買おう、なにかを。いざ尋常に有楽町のビックカメラに参ったのである。

 

 やはり東京というのは人口が稠密してやがる。おいこら急に止まるんじゃねぇ。東京の人間は車の運転をしないためか、急に歩行を停止したり、方向指示器もださずに唐突な方向転換をしたりする。そんな彼や彼女の挙措をいちはやくレーダーでキャッチしてしまうおれは、おっとあぶねぇつって回避運動、すると避難先にまた人がいて、なんなんですか一体あなたは、みたいな汚いものをみるような目でみてくる。ちがうんだ。悪いのはおれじゃない。あいつです。あいつがわるいんです。だって急にこっちにくるから。いや、すいません…。はい、示談金です。ペイペイでお願いします。はいスキャンで。なんつってなにも買わずにビックカメラを後にしたのである。

 

 土曜日。ようたの散髪。しかしなにか心にひっかかる。そうか。これは蟠っている。せっかくの20パーオフなのにおれはなにもできなかった。くやしみ~。なにがなんでもこの恨み、晴らしてやる。と、やってきたのは地元の閑古鳥の鳴くコジマ電機。

 

 妻のアイフォーンを換えた。6sからXRへと。換えたのだ。ペイペイで。むろん20パーオフされた。よかった。これでなんの憂いもなく正月を迎えられる。世の中には全額キャッシュバックするひともあるのだろうが、それでもつつましく生きている私達にとって、二十パーオフってだけでも、たいへんありがたい経済効果なのである。ありがとう世界。

 

 ようたにはグルジオキングのソフビを購入した。おれは個人的にメトロン星人が欲しかったのだが、ようたがしきりに「そ、そそそそ、そんなのかったら、あかちゃん、こわがるよ……?」と申すので、いやお前がこわいんだろ、とおもったが、よしわかった、そこまで言うならこれは止そう、と、代替案としてウルトラセブンのソフビを購入したのである。

 

 おもちゃを買ってしまう癖がある。浪費家ではないとおもう。理由は己の物欲、いわゆるギターやアンプ、CD、書籍についてはかなり二の足をふむタイプだからである。しかし妻や子のものとなると、がんがん購入してしまう。するとおれの手持ちのアイテム~は少ない。なのにカネがない。これがいわゆる、他のひとよりも一層貧乏を感ずる所以であるとおもうのだよ。つらい。かなしい。どうも生きにくい。

 

 チョコレートプラネットの芸人がイッコーさんのものまねをしているのだが、なにかと四文字、あるいは語感がそれに近しいときにイッコーさんのやつをやってしまう。おれに「イッコーさんのものまねをするチョコプラ」が降臨する。スンドゥブ~。やりたいわけではない。流行に乗るのはださいという美学があるからだ。しかしやってしまう。おべんと~。つらい。かなしみ~。どうも生きにくい。