そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

驚きと感謝をこめて

 金持ちと灰吹きはたまるほど汚い、なんて言うけれど、それに比してどうですかこの身の清らかさは。清貧。すばらしいことじゃないか。ビーティフルアンドワンダフル。生まれたぼくたちは美しい。

 

 たとえ着合わせのものはみすぼらしくても、心がきれいならそれでいいじゃないか。そうおもう。おれはね、そうおもうんだ。けれどもなんなんですかこの世界。見てごらんよ、ほら。みんな、洒落てる。

 

 社会に生きるとはみんなに合わせる、ということである。おれはいままで襤褸の袷一枚でなんとか凌いできた。そのせい(そのせいじゃないかもしれないけれど)で白眼視され続けてきた。それでもよかった。おれひとりの人生ならば。しかし、いまはこの子がいる。息子がいるんです。

 

 このままの汚い身なりでは子どもが軽蔑される。そんなかなしいことはない。それはつらいことだよ。だからおれはがんばって不退転の決意をする。行こう、H&Mへ。ということで過日、ショッピングモールに出かけたのである。

 

 なぜにH&Mなのか? という疑問に答えなければならない。理由はふたつ。①舶来の衣類のため衣類乾燥機に強い。②他キッズとあまり被らない。③息子の好きな恐竜をモチーフにしている。④洒落てる。よっつあった。

 

 子どもの成長というのは著しいものがあって、すぐに衣類がサイズアウトしてしまう。だから「これでいいか」という急場を凌ぐ気持ちでやってきたのだが、日本向けの製品は衣類乾燥機に弱く、すぐにぺらぺらになってしまうし、なにせ拙息はファッションにうるさい。これはいやだが、あれは着る。なんて品隲がはなはだしいのである。

 

 そんな彼をゆいいつ陽動できるのが「恐竜」であり、これをモチーフにしているものであれば、いとも簡単に随意の衣服を装着せしめることができるのである。

 

 だから行こう、H&Mへ。さぁ。しかし問題がある。妻と嬰児である次男にはまだ外出許可がおりておらず、買い物に行く場合、おれと息子のふたりで出かけなければならない。

 

 おれも息子も買い物が嫌いである。資本主義に加担しているような気がして。というかたぶんちょっとビョーキなのだとおもう。早く帰りたい病。おれはひと気のおおい場所が苦手だし、いろんな「これを買わないとお前は死ぬ」的、不安を扇動する旗幟鮮明な企業広告が目端にはいってくるとクラクラとめまいがしてしまう。

 

 息子は息子で暴れ放題である。口をひらけば「はやくかえろうよ」。まいるね。参るスデイビスだね。でもそんなことじゃ生きて行けない。それに息子ももう四歳だ。おれとふたりで買い物くらい出来なければ、男としての名折れだ。

 

 そのショッピングモールは東西に伸びており、東がブルー、西がグリーンなどと地区をカラー分けしている。おれたちが行きたい場所はブルーに近く、この付近に駐車できれば早道に買い物が可能である。

 

 しかし、このブルーとグリーンというありきたりな配色のせいだとおもうのだが、おれはなぜだかグリーンに駐車してしまった。ゴールドとパープルとかにしてほしい。

 

 まぁ買い物はなんとかなった。しかし、吸い込まれるようにトイザラスにも行ってしまった。そして偶然にもトイザラスがたな卸しなのか、超大安売りをしていた。なにも買わないわけにはいくまい。と、なぜだかホットウィールのスロットカーという玩具を購入してしまった。3500円が1750円になっていたので、結果として1750円の得をした、という計算になるが、なぜだか手許不如意。息子のMA1姿はかっこよかった。帽子も似合う族。ふたりでがんばったね。