そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

「最終的には奥田民生になりたいとおもっています」

 天下りの多い会社でやばいとおもう。弊社。こないだ、また「顧問」という肩書きの、見知らぬ御大と面談する機会があったのだが、おもわず「最終的には奥田民生になりたいとおもっています」と、口からこぼしてしまうところであった。

 

 というのも、「これからどうなっていきたい?」などという愚問を突きつけられたからである。おまえ、この会社だとおれのほうが先輩だぜ? 敬意、しめそうぜ? という感情が湧きあがったが、しょせん敵は老人。ここは鷹揚な若者の精神で赦してやることにしたのである。

 

 どうなる? おれはおれだよ。って。そういうことではない。アイノウ。まぁ、無難に立身出世のコースを歩きたいですね。まずは基本給を上げてくれないと困りますね。あ、うちですか? 共働きです。そうです。あはは、私のお給銀が低いからですね。ひとつの家庭も養うことのできない会社です。恥ずべきです。純利はけっこうあるのにですね。どこに消えるのでしょうかね。

 

 そんなことを言ったってしょうがないじゃないか。つってじゃあ正直に、おれはおれの心のままに、ありのままに、有体に、素直な自分を表現するならば、やっぱぶっちゃけ奥田民生になりたいとおもう。

 

 これは彼の生き方、思想、ライフスタイル、ラーメン、カレー、ミュージックに憧れる、というよりも、もうほんと本人になりたいですね。けっこうマジで。レスポールスペシャルにビグズビー付けたのも彼のせい。弦の交換クソめんどい。けれども奥田民生になりたいんだからしょうがない。とおもって超大なストレスを感じながらビグズビーという重荷をギターに背負わせてる。

 

 といっても、民生の音楽はサボテンミュージアムという音源を聴いたぎりなのだけれども、けれどもおれの心には奥田民生がいつでも住みついている。住み着いているし、なにか人生の岐路に立たされたとき、心のなかの奥田民生が「いいんじゃない、それで」みたいなかんじで言ってくる。

 

 そういう「なんでもいいじゃん」みたいなの。飄然としている。そのかんじ、おまえマジでかっこいいな、とおもっている。けれどもひとたび音楽面になると、常識ではちょっと考えられないくらいのこだわりをみせるのである。

 

 そこがかっこいいじゃん。有髯たる男子の理想のありかたといえる。やばいじゃん。なりたいじゃん民生に。ってゆうか、逆に訊くけど奥田民生になりたくない男っているの? ってなもんであるよ。ほんと。

 

 じゃあこれから民生になりにいこう。みたいに出来ないのが悔しい。ギャル男になりたいから、まずは日サロでこんがり焼こう! みたいにできないのである。だっておれはおれだよ。おれの塩基配列はこうなんだもん。でもきっと民生に近づくことならできるんじゃあるまいか。まずなにをすればいいの? それはきっとレスポールスタンダードを買うことだよ、なんておもってもそんな資金があるわけもなく、貧乏とは罪であるよ。まずは基本給を上げてください。