GLAY「HOWEVER」の二番のサビで盛り上がる夫婦
ビートルズに「ヘルプ」という曲があって、出張なんでも鑑定団のテーマとして使われていることで有名だけれども、これがいい曲なんですよ。ご存知?
ビートルズの曲はサビからはじまることがおおい。それはおそらく曲のパンチ力を意識したがためだとおもわれる。やっぱいきなりサビが来ると「うわ!」っておもうじゃないですか。しかもサビからだから「声」ではじまるんですね。おれはすごく斬新だとおもう。オルタナだよ。
で、ヘルプも声からはじまるんですけど、問題はそのサビが終わったあとのAメロですよ。これがまたメロとコーラスのポリフォニーが素敵なのですな。しあわせな旋律の交じり合いです。
で、そのAメロのコーラスなのですけれど、なんとこれ主旋律よりも先に歌われるんですね。ジョンが「When I was younger, so much younger than today」のまえにポールとジョージのコーラス「When~」が飛び出してるのです。
す、すごくないですか? おれはいつ聴いてもここで「まじかー」となるのである。おそらくクラシックのような古典では、こういう弱い副メロから立ち上がるような強い主旋律! みたいな置き方はあるのだろうけれど、今おれが論じているのは一介のポップソングなわけであって、おれなんかはどんなに脳漿を搾ったって「よし! コーラスを先に歌わせちゃおう」なんて発想は出てこないのである。かなしい才能だよ。
ほいで、なんぜそんなビートルズを引き合いにだしたのか、というと昨晩、風呂を洗浄するさいの鬨の声、ってゆうかファイティングマーチとして曲を選ぶのだが、「さて、今宵はどんな名曲が飛び出すのでしょうか」なんつって、全国五万人の視聴者からえらばれた曲が、なんとグレイ珠玉の名曲「ハウエバー」だったからである。
すごくいい曲。すごくいい曲にはひとをボーカルにさせる能力があって、おれはこれを聴くたんびにテルになってしまう。あとウインターアゲインもそう。ってゆうかグレイはだいたいテルになる。
で二番のサビ。ここがすごい。だってサビの頭二小節を歌わない。コーラスオンリーなのである。フーウーウウウー。だけ。え? まじ? 一番のサビでは「絶え間なく注ぐ愛の名を永遠と呼ぶことができたなら」ってあるのだけれど、ニ番は「孤独を背負う人々の群れに佇んでいた」ですよ。つまり、これは一番でいえば「永遠と呼ぶことができたなら」のぶぶんのみであって、一番であれだけ盛り上がりをみせた超強いメロディ「絶え間なく注ぐ愛の名を」のぶぶんをたやすく捨てたのである。
なんなんだタクロー。おまえマジでなんなんだよ。それとも佐久間のアレンジですか? ビートルズはコーラスを飛び出させて主旋律を強調したけれど、グレイはコーラスのみにすることでなくなった主旋律を水際立たせてしまった。
音楽の基本として、曲になにかを「足す」よりも「引く」ほうがインパクトがある。それの最たるものであるとおもう。
そんなことをおもって二番のサビが「フーウフウウー」とはじまったとき、おれはおもわず「ここだよ!」なんて口吻熱く口走ってしまったのだが、どうじに妻も「ここだよ!」と雷鳴のような鋭い声をあげていたのである。
なんてすてきなダブルトラック。ビートルズは声に厚みをもたせるために、おなじメロディーを同じように歌って録音し、ふたつのボーカルトラックをレコードに吹き込んでいるんですけれども、そんな感じのダブルトラック的な現象であった。
という、ビートルズで始まり、ビートルズで締めくくるという、まるで「ハウエバー」が「やわらかな風が吹くこの場所で」ではじまり「やわらかな風が吹くこの場所で」で終わるような、そんなかんじじゃないですか? どうなんですか? この日記?