そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

幼稚園に負けたくない

 昨晩。闇に乗じて帰宅すると、洗面台に衣類があった。息子の体操着であった。泥が飛散しており、とても汚れていたため、ウタマロ石けんを利用し、泥をおとし、日立のビートウォッシュにほうりこんだ。

 

 三歳児はこども園という、保育園と幼稚園が綯い交ぜになったハイブリッド園にかよっている。そこではきほん、体操着をきてすごしているのだが、毎日超汚して帰ってくる。

 

 毎日汚れるのであれば、そんなに洗わなくてもいいだろう、という甘い気持ちが滲出してくる。どうせまた汚れるし。おおきくなったら買い換えるし。なんておもってしまう。

 

 しかし、ふいに「やっぱ保育園の子はお父さんもお母さんも忙しいから…」という声が聞こえてくる。幼稚園組の声である。泥の落ちきらなかった体操着をきた息子。それをみた親の声。その発言は寛仁というメッキで固められているが、中身は嘲弄と侮蔑である。勝手な想像。おれは精神的病気かもしれない。

 

 だから、おれはここで手を抜くわけにはならない。完璧とはいえないけれど、自分のベストを尽くす。不惜身命。一所懸命。もみ洗い。ブラシ洗い。ふたつの技巧を駆使するのである。

 

「だから、負けなくないんだよ」とおれは朋輩に申し上げたところ、「そんなこと思いませんよ」と言われてしまった。語尾に(笑)がついていた。はは、なんてピュアなやつなんだ。おまえ、人生一週目だろ。

 

 世の中は悪意に満ちている。善意などすぐ染まってしまうのである。おれの人生はたぶん五週目くらいなんだけれど、もう転生しても転生しても、この悪意は濾過できねぇ。抜けきらない。

 

 だから世の中の悪意に対しては、おれも悪意で闘うしかないのである。デビルマン戦法。つまり、泥をおとしきることによって、「共働きでもこういうことちゃんとできるんですよ。おれたち夫婦はそういうとこしっかりしてますから。まぁこれくらいのこと、働いていたって普通にできますけど。あれ? 働いていないのにあんまきれいじゃないっすね? もしかして忙しかったんですか?」というスタンスをとり、保育園組のことをどこかで卑下している幼稚園組の悪意にたいして、さらなるマウンティングをとるのである。ここを地獄といわずなんといおうか。

 

 全人類が平等なわけなく、それはやっぱスタート地点というのに大きく左右される。たまたま金のある家に生まれてきた唐変木の遊冶郎に、おれたち正義の努力家が負けてたまるか、クソったれ。とおもって被害妄想の中、今日もがんばって生きている。