そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

飢渇

 寂寥としている。たな曇りの人生だ。すべてが灰色に染まっている。いや、灰色に染まっている? たぶんちがうくて、きっとそもそも世界とは灰色のものなんじゃなかろうか。つって、ふぅ。溜息。パセティックだね。一条の光も射し込まんね。とにかくおれは酒が飲みたいんよ。

 飲んでもいいんじゃない? と妻はいう。けれど、男が一度決めたことだ。やぶれんよ。でももうちょっとあれですね。限界。なにをしててもつまらんし。飲みすぎなきゃいいんじゃない? って、おい。おれが飲みすぎない、なんて器用なまねができるかっちゅうの。

 ただの一滴でもよいとさえおもう。静止した水面に、ぴしゃん、と一縷の水滴がたれるように、それは波紋を広げて、波はつづくよ、どーこまーでーも、のーをこえ、やまこーえ、たーにこえてー。

 できればウイスキーなんかがいい。ジンでもいい。とにかく蒸留酒がいい。麦酒? うーん、ちょっとたりない。日本酒? まぁちょっとゆるせる。ワイン? がぶがぶのみたい。焼酎? いいね! やっぱ蒸留酒だよ。

 望みはビール券。あれってたしか使用期限がある。そしてうちには、いただいたビール券があと一万円ほどあったはずだ。その期限が近々であれば、「やっぱいただいたものだし、もったいないからつかおうか?」なんていえる。いえるはず。そんで買った酒類はおれしか飲まんし、おいておいても台所の肥やしになってしまうだけだから、それを処理しよう。いや、べつだん飲みたいわけちゃうんよ。つって。でもやっぱ、いただいたものだから捨てるのはアレじゃん? つって。よしよし。これでいこう。ほんと。神っているわ、まじ。そういう作戦でいきますね。こんど。げんきになりたい。