そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

停酒している

 酒に真実あり。なんていうけど、おまえ、ほんとうそのとおりだよッ! と抱擁して舌の絡み合う深い口付けをしてやりたくなる。

 生きるのは地獄ですよ。寸善尺魔。なんて言ったのは夏目だった太宰だったか。たぶん太宰じゃね? でもきっと生命活動を辛苦だとかんじるのは、ある一定数の人間であって、もうある一定数は、毎日がハッピー! なんてぐあいに生きているんじゃねぇかな、なんておれはおもう。

 

 そんなふうにぼくたちも / 生きていけたら素晴らしい

 時にはくらい人生も / トンネルぬければ / 夏の海

 

 これはおれの大好きなロードムービー「裸の大将」のテーマソング「野に咲く花のように」の歌詞なのだけれども、そんなふうにハッピーに生きていくためにおれは酒を飲んでいた。飲んでいたんだ。

 生活のヤバさは現実の圧力にある。それは凄まじい痛みをともなうし、なにより気合や胆力、志のような精神的な活動をひつようとする。

 その精神力を鼓舞するのに酒はもってこいだ。まさに神の水ってかんじで飲めば力が湧いてくるし、なによりも神経が鈍感になるので痛みもかんじにくくなる。

 無敵感。このいきいきとした芯の堅い光柱をノーマル状態でもっている仁が「毎日ハッピー組」であり、おれたちのような死んだ魚の目をした生きる家畜は、枯れてくさった弱々しい葦のような精神が常態で、だから人生地獄組なのだろう。ほとほと参ってしまう。愛がたりねぇ。

 でも酒を飲めばおれはそこに近づける。手の届く範囲に幸せな生活があるんだ。それを飲めば安心して眠れる。ってか、なにもかもがどうでもよくなる。これだよ、これ。社会には無責任だよ! きたきた! ってニュアンスですねー。

 でも豈図らんや、おれは酒をのんでない。つまんない人生だぜ。ってゆうのもまぁいろいろとあって、たぶん二年くらい飲まない。そうしておこうとおもっている。朋あり遠方より来るってゆうの? そういう飲み会みたいなのは別ですけど。

 だから禁酒ではなく一時的な停酒ですね。でもどうしても耐久性が脆弱な精神のときは飲んじゃうかもしれない。まぁそんときはそんときだね。揺曳するこころ。水星軌道とその掩蔽