そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

頭がやばい

 右脳の頭頂部あたりに杳とした痛みをかんじている。疼くような痛みで、首をふりふりするたびに。あっ! じんわり来てる! じんわり来てる! とおもう。

 たぶんきっと低気圧のせいなのだろう。そうおもうようにしている。じゃないと不安で仕方が無い。脳になにか損傷があったらどうしよう、みたいな暗澹たるきもちになってしまう。どうしよう!

 とりあえずロキソニンを服した。しかしまだ痛い。おれはこのまま死ぬのかもしれない。こわくなってきちゃった。これが最期の日記になるのかもしれない。まだ痛い。じんわり来てる! じんわり来てる! 遺言:あざとい女は反吐が出るくらい嫌いだよ!

 もしかしたらこれは急激な気圧の変化による頭痛ではないのかもしれない。

 そうおもうのには理由がある。理由と書いて「わけ」と読む。本気と書いて「マジ」と読むみたいな。蛭子能収は「知らなきゃ読めない漢字」のナンバーワン。

 数日前。おれは息子といちゃいちゃしていた。そのとき息子のでこちんとおれの側頭部が火花を発した。衝突したのである。

 もしかしたら。そのとき脳の血管かなにかが裂傷して、傷ができた矢庭には出血だけですんでいたのだが、それが数日経ったことにより、血小板がおのれの役目を勇躍おどりでたため、血塊でできた障壁が血の管のなかに精製されてしまい、その結果として、血液が大渋滞を惹起させ、血管がその障壁のぶぶんで破裂しそうになっているのではないか。だからこの圧迫したような痛みが延々と続いているのではないか。痛みはボディの危険信号ですよ。デンジャーシグナル。

 じゃあ医院に行って刀圭家に看てもらったらどうか、という話である。ちっちっちっ。と、立てた人差し指を振りながら。そんな単純なもんじゃないぜ。ニヒルな笑い。冷笑家。

 もしこれが単なる偏頭痛だったばあい、「あー、偏頭痛ですねー」とかいわれた場合、おれは男としての矜持を失うことになる。つまり「こんなもんで医者にくるなや」みたいなことを思われる可能性がある。「でも、ぶったんですよ」なんて哀切しても、ってゆうかじゃあ逆に息子さんを看たほうがいいのでは? みたいなかんじになってしまって、こうなってはさらに親としての矜持をも失うことになる。人生最大のピンチだ。

 おれは武士だ。いやたぶんきっと水呑百姓。でも心は武士でありたい。だから恥を覚えるよりも死をえらぶ。それが男の本懐だ。なんつってもうヤバイ。頭がいろいろと。やばい。