そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

イギーポップファンクラブみたいじゃん

 家庭をもった三十代男性が、休日に「なにもなかった」なんていったら、「うそやろ」みたいな感じになるとおもう。なにもない休日があるわけないじゃん! まさか!

 と、いうふうな「まさか!」とおもう意外な一日があった。この土日、マジでなにもなかったのである。

 つまり「なにもない日」が、その境涯、おかれた人生のポイント、時勢の流れ、リズムにおいて意外性を持つ、というなんとも矛盾した土日、ということになる。なるのか? ならないですよね。ならないんですよ。

 判で押したような土日。うふふ。仮面ライダービルドがおもしろかった。

 日曜の夕刻。曇天。まだ冬の翳をかんじる肌寒さだった。

 おれは夕飯をこしらえていたんだが、五時半すぎ。息子が近所の子をつれて帰ってきた。

 その子は三歳で息子とおなじ歳で、ぱっちりした二重に、ちいさな鼻と口をもっていて、あどけない表情に澄んだ幼少期とくゆうのいたずらな笑みが光る、だれがみても百パー「マジかわいい」という女の子、そんな傾城の美女だ。

 おれは料理をしているとき耳が寂しいので音楽を聴いているんだが、奇しくもそのときピクシーズを聴いていた。

 そしたら三歳の美女が「なんてうたー?」と訊くので、「外国のうただよ」と言った。そしたら「へんなうたー(笑)」と笑いながら言った。瞬間、脳内に充たされた銀縁眼鏡の四十代男性の絶唱するすがた。おれはいま向井になってる! とおもった。

 はじめて言われた。いままで付き合った女性から聴いている音楽について、「へんなうた」と笑いながら言われたことはなかった。そんな初体験物語。なんだ。意外と一日に「なにか」あるじゃん。

 これからきっとあの曲を聴くたびに、きみの顔の輪郭をちょっと思い出したりするのかもしれない。すきとおってみえるのだ。透明少女的体験。でも、三歳児にそんなこと言うとやばいやつみたいじゃん。だまっていたほうがいいですね。