そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

マヌーサとメダパニ、どちらの幻覚作用がつよいのか

 

 過日。客先から仕事についての連絡があった。事前に打ち合わせたものの再確認のための電子連絡であった。

 しかし、それの様子がどうもおかしい。客先の電子連絡には、打ち合わせたものとはまったくちがったないようの、客先にとって完全に都合の好いものが記述されていたのである。

 この客、じつは先日もおなじようなことがあった。「うちはAからBまでしかできませんよ」という内容で作業をすすめていたのだが、当日の客先曰く「CもDもやってくれるんですよね」という話になっていたのである。

 このお客さんおかしいんですよ。ってかこの会社、おかしいんですよ。いっつもいっつも。こういうことばっか。すげー若い人が多い会社でイケイケなかんじ。うわー、こんなんで仕事つとまるんですねー。

 と、俺はなんて不遜な思惟をしてしまったのだろう。俺はいま完全にアルコール中毒だ。俺が常住より幻覚をみていた。まどろんでいた、という可能性は否定できない。つまり、打ち合わせの時点で、俺が勘違いしていたのか。

 嗚呼きっとそうなんだ。本日ちこくしたのもそう。けっして電車が遅延したわけではない。電車はもうかんぺきな通常運行だったはずだ。ときおり車内アナウンスで「本日は、送電トラブルによる遅延が発生したしまして…」なんていうのもきっと幻聴だったのだ。

 俺は酒を飲むのをやめたほうがいいのかもしれない。しかし、そんなことは後回しだ。とにかく俺は会社に急がねばならない。そうおもっておれは、腰元に宿っている愛刀の備前国辰光の鞘をはらい、上段に構え、明鏡止水。すっ、と時間を止めてから白刃を振り下ろした。すると、眼前の大地はモーゼの海割りのごとくまっぷたつになり、会社までの一本の道となった。ははは、これでまっすぐ歩いて時間短縮だ。なんつっておれは幻覚をみているのかもしれない。