そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

息子と濃厚なランデブー

 

 息子が笑うとき、眉間から鼻梁にかけて皺を刻んで笑う。それが妻に似ていて、みていると血脈の勇躍をかんじる。過日、妻が労働のために不在だったので息子とふたりきりの濃厚な休日を送った。

 人間のいちにちというのは主に「食事」と「睡眠」、あと「その他」で語られると思う。朝飯はインスタントのラーメンを誂えた。マルちゃん製麺のしょうゆ味だった。睡眠時にうしなわれた人体の塩味が補填されていくような感覚を覚えた。たまごは固めがすき。

 秋の風が身体に染み渡るような清らかさだった。陽射しにはまだすこし夏の残滓があった。ふわりと薫る金木犀とブタクサの花粉が俺の鼻腔をくすぐった。

 おもに庭で時間をすごした。軒下には腰をすえるのにちょうど好い具合のコンクリートの塊がある。息子は狂人のごとく独りで訥々とつぶやきながら遊んでいた。百円でなんでも買える道具屋で購入した車型の樹脂。ひまだったのですこしスマートフォンツイッターやらブログを見た。そうか、ふつうに生きていればアウフタクトなんて単語は知らないよな。と思った。俺はなぜか白色レグホンを思った。

 午。太陽からの波動が強くなった。息子がどうしても自転車に乗りたいと懇願した。しかし自転車は妻が乗っていってしまった。しかたなく駅まで歩いて自転車を奪還しにいった。

 駅前の駐輪場は電子マネーで精算できる。ゆえにサイフをもたなかった。しかし、どうやら勘定メカの内部の印刷紙が切れると電子マネーでの精算ができなくなるらしい。どうしてそんなことを知っているか、というと、そのときジャストで印刷紙が切れていたらしく、俺のアイフォンでは金の支払いができなかった。

 しかし天佑。ちょうど勘定メカの点検びとが推参して内部のあれこれをしてくださった。俺は本日ついてるな、と思った。

 コンビニに行って飯をかった。ついでに息子が仮面ライダー食玩を購入したい、言ったので、四百円もしたが買った。月末でアドセンスの調子がよかったから、まぁいっか、と思った。こうして息子の仮面ライダー童貞は失われた。息子はチャーハンが好き。

 午飯を食ったら、またすこしあそんだ。遊んでばかりの人。ノンタンの絵本を読んだりした。眠くなったのですこし眠った。ふたりと仮面ライダーでふとんに倒れた。気がつけば夕刻になっていた。

 すこし夕飯の支度をした。下ごしらえ。まだ息子は昏睡だった。ゆすっぶって起こした。外では近所の子どもたちの声がした。彼らとすこしあそんだ。俺はキッズにもてる。

 妻が帰宅してみんなで夕飯を食べた。ご飯にかけるクリームシチューという巷間を賑わしている品である。うまかった。そうして時間は経ち、俺は酒を飲んでピーマンの肉詰めをひたすら作成した。妻に、息子と一緒でたのしかった、と言った。