そしてブルーズへの回帰

「まだロックが好き」のつづき

バリュープラザで一日を過ごした

 

空気が落ちていった。しかし気圧の高低は無かった。ゴム製の球体に封印された空気だった。その比重分、この星の重力に唯々諾々として従っていた。

この命脈の果て。その同胞が仕切られた空間のなかで生きていた。ちいさな筋肉を収縮させて、ちいさな肺胞にたくさんの酸素を詰め込んでいた。ちいさな身体に無限の可能性があるな、と思った。

音響装置が鳴っていた。ちいさな主張では払拭されてしまう海嘯のごとき音波だった。すこし気をもんだ。しかし隣接する騒々しさの魔界との兼ね合いだ。仕方ないと得心せざるを得なかった。

昼めし。小麦、獣肉、発酵した乳、葉、それらを一塊にしたものを食べた。芋を高熱の油にくぐらせたものもたべた。獣肉は豚や牛を混交したものだと思う。とんでもなく美食だった。

午睡というものをしなかった。持久力がついた息子は遊戯に惑溺していた。時折丁々発止、闘争をした。切歯扼腕。悽愴流涕。

木製の汽車。その線路。と言ってもちいさな玩具。掛け合わせた。部品が不足。頭を使えと大人は言う。でもそれでもどうしようもないときがある。人生。膂力にまかせることも大事だ。

砂。形状を維持しようとする。粘土のような砂だった。重くねばついた。キルティックサンド。料理が好きだという。

水、茶、珈琲は無料。茶や珈琲は粉を薄めたような濁り水。しかしそれでも。

無限のきたい。遊戯に飽和。悪魔のようにとりつく欲望。帰巣本能。負けない。親の都合。楽をしていきたい。それは子育ても。でも享楽と惰弱が合致した空間があった。

まるで宇宙だった。上も下も北も南もない宇宙がここまで届いていた。かろうじて見えたのは反射する街道だった。雨は沛然。光で光が見えない世界。図書館で本を返した。沈黙の車内。雨音が落ちていった。